がん検診とがん予防について

公開日 2023年03月28日

更新日 2023年11月21日

目的

がん検診の意義は、無症状、自覚症状のないうちにがんを早期発見し、早期に適切な治療を行うことによって、がんによる死亡リスクを減少させることです。

検診の種類

国の指針(※1)では、がんの死亡率を減少させるため、5つのがん検診(胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん)を、科学的に効果が明らかな検診方法、対象年齢、受診間隔で実施し、精度管理(※2)を行うこととしています。
(※1)「がん予防重点健康教育及び検診実施のための指針」(厚生労働省)
(※2)検診が有効かつ効果的に行われているか、方法等について点検し評価する仕組み。

「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づくがん検診
がん 対象者

受診を特に推奨する者

実施回数 検査方法
胃がん検診 50歳以上 50歳以上69歳以下 2年に1回

問診、胃部エックス線検査

問診、胃内視鏡検査
肺がん検診 40歳以上 40歳以上69歳以下 年1回

問診、胸部エックス線検査
喀痰細胞診(50歳以上で喫煙指数600以上の者) 

大腸がん検診 40歳以上 40歳以上69歳以下 年1回 問診、免疫便潜血検査2日法
子宮頸がん検診 20歳以上の女性 20歳以上69歳以下 2年に1回 問診、視診、内診、細胞診
乳がん検診 40歳以上の女性 40歳以上69歳以下 2年に1回 問診、乳房エックス線検査(マンモグラフィ)

※胃がん検診については。当分の間、胃部エックス線検査を40歳以上の方に年1回実施しても差し支えないとしています。

検診の流れ

がん検診は、がんの疑いがあるか異常がないかを判定する検査です。がんの疑いがあると判定された場合は、医療機関での精密検査を指示されます。
精密検査では、がんかどうかをより詳しく調べるもので、がんを早期発見し、早期に治療するためにも重要な検査ですので、必ず受診してください。早期発見、早期治療により、がんとわかっても90%以上の人が助かります。また、異常なしと判定された場合でも、定期的にがん検診を受けましょう。

知って受けよう! 「がん検診の利益(メリット)・不利益(デメリット)」

がん検診の目的は、無症状のうちにがんを早期に発見し、適切な治療を行い、がんによる死亡を減少させることです。単に多くのがんをみつけることが、がん検診の目的ではありません。
また、すべてのがん検診には、メリットとデメリットがあり、いくつかのがん検診の検査方法は、現在までのところがん患者の診療では有用であっても、検診で使用した場合の効果が十分に確かめられていないものもあります。
がん検診のメリットとデメリットを正しく理解し、正しい知識を持ってがん検診を受診しましょう。

がん検診の利益(メリット)

  1. 早期発見・早期治療により命を守る
    がん検診の最大のメリットは、検診によりがんを早期に見つけることで命を守ることです。しかしそのためには、命を守る効果が確かめられた種類のがん検診を受けることが大切です。
  2. がんの治療が容易
    がん検診は、「検診を受ける時点で症状がない健康な人」が対象です。そのため、検診では、がんが「早期の段階」に見つかりやすく、早期のがんはそのほとんどが治り、しかも、身体への負担が少ない治療ですみます。
     一方、症状が出てから病院の外来等を受診して発見されるがんは、比較的進行した段階のことが多く、臓器によっては治療が難しい場合があります。
  3. 「異常なし」が確かめられた安心
    がん検診を受けて「がんがない」と確かめられると、きっと安心できるでしょう。これもがん検診のメリットといえます。

がん検診の不利益(デメリット)

  1. がん検診ではがんが100%見つかるわけではない(偽陰性)
    どのような優れた検査でも、100%の精度ではありません。がんが小さすぎたり、見つけにくい場所や、見つけにくい形をしていたりする場合は、検査を受けてもがんを見逃してしまうこともあります。この見逃しのことを、「偽陰性」と言い、偽陰性の程度は、がんの種類や検査の精度によって異なります。
  2.  結果的に不必要な治療や検査を招く(過剰診断・偽陽性)
    検診で見つかるがんには、微小でその後も進行がんにはならないがんもあり、その場合、本来生命に影響しません。しかし、いったん見つかった早期がんは、治療するために手術などの治療が行われます。この治療は、本来は不要であった可能性があり、このことを「過剰診断」といいます。今のところ、このような がんと普通のがんを早期に見つかった段階で区別することはできません。 さらに、がん検診によって、「がんの疑い」と判定されれば、必ず精密検査を受ける必要があります。しかし、精密検査を受けた結果「がんではなかった」ということも多くあります。これを検診の「偽陽性」と言います。この偽陽性もある程度は避けようがありません。
  3. 検査を行うことで偶発症を招く
    検診として検査を受けることで、まれに事故等を招くことがあります。このことを「偶発症」と言います。たとえば、内視鏡検査を受けると、胃の場合で1万人に一人、大腸では1,500人に一人の割合で、胃や腸に穴が開いたり出血したりすることが報告されています。また、検査ではX線による被爆もあります。いずれも極めて低い可能性ですが、注意深く検査を行ってもこのような偶発症が起こる可能性をゼロにすることはできません。
  4. 検診による心理的影響
    がん検診を受ける場合は、個人差はありますが心理的負担が考えられます。検診により「がんの疑い」とされた場合は、精密検査を受けなくてはなりませんが、その結果が悪性か良性か、検査結果が出るまでの心理的負担は大きいものです。

メリットを最大に、デメリットは最小を目指す対策型

がん検診にはメリットだけでなくデメリットもあります。それでも、がんから命を守るためには、がん検診を受けることが大変重要です。自治体が行うがん検診は、その質を保つための精度管理(検診の評価)によって、デメリットが大きくならないように取り組まれています。また、“メリットがデメリットを上回り、命を守るために受けるべきがん検診”が国により定められています。この検診を「対策型がん検診」といいます。ぜひ、対策型がん検診を定期的に受けて、がんから命を守りましょう。(“対策型検診と任意型検診“を参考)

伊勢原市が行うがん検診の種類と申し込み方法

がん検診の種類、対象年者及び受診費用は次のとおりです。なお、受診時に伊勢原市に住民登録があり、各検診の対象年齢に該当する方が対象となります。各がん検診を年度(4月から翌年の3月末)で1回のみ受診することができます。
これらは厚生労働省が定めるがん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針』(以下「国の指針」という。)において、対象全体の死亡率を下げる効果が科学的に証明されているとして、市町村が実施することが推奨されているがん検診です。
 

対象 検診の種類・方法 集団がん検診 施設(医療機関)がん検診  申し込み方法
自己負担額
(免除制度あり)
備 考  自己負担額
(免除制度あり)

備 考

検診はすべて
事前申し込み制です
40歳以上の男女 肺がん 

エックス線検査

200円 エックス線撮影(2方向) 200円 エックス線撮影(2方向)※3

電話または電子申請
(事前申し込み制)

喀痰細胞診 600円 問診で必要とされた人※4
必ずエックス線検査と同時受診
胃がん エックス線検査(バリウム) 1200円
大腸がん 検便(2日法) 500円 事前に検査容器を郵送します 事前に検査容器を郵送します
女性 乳がん マンモグラフィ検診

1500円

40歳以上※1 1500円 40歳以上
子宮がん 頸部細胞診 900円 20歳以上 1700円 20歳以上:7月~開始予定
頸部・体部細胞診 2800円 20歳以上:7月~開始予定 
ただし医師に必要と判断された人※2


※1 マンモグラフィ検査は、40歳代の人は2方向撮影、50歳以上の人は1方向撮影です。
※2 子宮がん検診(施設検診)では、次に該当する人に対して体部細胞診(自己負担金1,100円)を行っています。体部 細胞診は、一部の施設(医療機関)で実施しており、頸部細胞診と同日受診です。体部細胞診のみの受診はできません。
 ・最近6カ月以内に不正性器出血または月経異常があった人
 ・医師が必要と認める人
※3 肺がん・結核検診は、市が契約する医療機関でいきいき健診(特定(一般)健康診査)と同時に実施します。受診希望の人は、医療機関へお申し出ください。肺がん・結核検診のみの受診はできません。
※4胸部X線撮影受診者で問診の結果必要とされた人(原則として50歳以上で喫煙指数(1日本数×年数)600以上))に実施します。喀痰細胞診のみの受診はできません。

自己負担免除について

次に該当する人は、自己負担金が免除になります。
(1) 70歳以上の人
(2) 生活保護世帯の人
(3) 世帯全員が市県民税・非課税の人
(2)、(3)に該当する人は、免除申請が必要です。受診日の1週間前までに担当へ申請してください。

対策型がん検診と任意型がん検診

がん検診には、区市町村などの住民検診に代表される「対策型がん検診」と、人間ドックなどの「任意型がん検診」があります。              

対策型がん検診と任意型がん検診の比較
検診方法 対策型がん検診(住民型検診) 任意型がん検診(人間ドック型)
基本条件 当該がんの死亡率を下げることを目的とし
て公共政策として行うがん検診。
対策型がん検診以外のもの。
検診対象者 検診対象として特定された集団構成員の全
員(一定の年齢範囲の住民など)。
ただし、無症状であること。症状があり。診
療の対象となる者は該当しない。
定義されない。ただし、無症状であること。
有症状者や診療の対象となる者は該当しない。
検診方法 当該がんの死亡率減少効果が確立してい
る方法を実施する
当該がんの死亡率減少効果が確立してい
る方法が選択されることが望ましい。
利益と不利益 利益と不利益のバランスを考慮する。利益が
不利益を上回り、不利益を最小化する。
検診提供者が適切な情報を提供した上で、
個人のレベルで判断する。
具体例 健康増進事業に区市町村の住民対象
のがん検診(注:国により指針に定められた
方法で実施)

検診機関や医療機関で行う人間ドックや、
保険者が福利厚生を目的として提供する
人間ドック

費用 公的補助があるため一部負担または無料となる。 全自己負担(健保組合によっては一部補助あり)

出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」

(1)対策型がん検診とは、科学的根拠のあるがん検診

対策型検診とは、がん死亡率の減少を目的とし、対象となる人々が検診による利益を公平に受けられるよう、公共施策として導入されるものです。この考え方に基づき区市町村が行うがん検診は、研究の蓄積とその科学的検証を通じて、利益(メリット)と不利益(デメリット)の程度を比べて、「効果が確かめられた方法」で行うことが推奨されています。

(2)任意型がん検診は、個人の判断に基づいて行うがん検診

任意型がん検診は、人間ドックなど医療機関が任意で提供する医療サービスです。このため、さまざまな検診方法がありますが、その中には、がん検診として死亡率減少の効果が確かめられていない検査方法が含まれる場合もあります。

(3)公共施策として自治体が行うがん検診としては、科学的根拠に基づくがん検診を推奨

がん検診は、メリットとともにデメリットもあるため、近年、がん検診として効果的な方法を科学的に評価した上で、有効であると分かってから公共の政策として実施することが国際標準となってきました。科学的な方法によって死亡率減少効果が認められたがん検診の検査方法、対象年齢、受診間隔については、国の指針にまとめられています(下表参照)。それ以外の方法は、今のところ効果があるかどうか不明、あるいは効果のない検診といえます。

※参考:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」

伊勢原市のがん検診ではどのくらいがんが発見されているのか

がん検診の結果、要精密検査となった人は精密検査を受診することで死亡リスクが減少します。
したがって、市が行うがん検診は精密検査受を受診するまでがワンセットです。
早期発見・早期治療のために必ず精密検査を受けましょう。
※精密検査を受診の有無をお手紙やお電話で市の保健師が確認させていただく場合もあります。

令和4年度に実施したがん検診
受診者 精密検査
要検査者 がんであった人(%)
肺がん 4219人 91人 2人(0.05%)
胃がん  980人 37人

1人(0.10%)

大腸がん 2525人 118人 2人(0.08%)

乳がん

2491人 118人 9人(0.36%)
子宮頸がん 2137人 27人

2人(0.09%)

がん予防について

科学的根拠に基づくがん予防

現代は情報があふれています。ネット検索をすると様々な予防法が出てきますが科学的根拠の有無や程度を見極めることが重要です。

科学的根拠のある予防を生活習慣に取り入れる

がんの発生は生活習慣と深いかかわりがあるので、がんのリスクを下げるためには現在の生活習慣を見直すことが重要です。たとえば、食生活・運動・禁煙などです。がん予防の生活習慣は、生活のなかで無理なく段階的に組み入れ、地道な積み重ねを続けていくことが大切です。

日本人のためのがん予防

国立がん研究センターの研究班は、日本特有の生活習慣、さらにはウイルスや細菌の感染への配慮を踏まえて、科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法」を提案しています。
2017年8月改訂版では、「喫煙」「飲酒」「食事」「身体活動」「体形」「感染」の6項目についての予防法が示されています。 

現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法
禁煙 たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。
飲酒 飲むなら、節度のある飲酒をする。
食事
  • 食事は偏らずバランスよくとる。
  • 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。
  • 野菜や果物不足にならない。
  • 飲食物を熱い状態でとらない。
身体活動 日常生活を活動的に。
体形 適正な範囲に。
感染 肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を。機会があればピロリ菌感染検査を。

出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」

  1. 喫煙 たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。
    喫煙はがんだけでなく、循環器疾患をはじめさまざまな病気のリスクとなります。たばこを吸っている人は禁煙をしましょう。また、たばこの煙は喫煙者自身だけでなく周りの人にも健康影響を及ぼしますので、十分な注意が必要です。
  2. 飲酒 飲むなら、節度のある飲酒をする。
    飲酒は、大腸がんをはじめとするがんのリスクとなります。そのため、普段飲まない人や飲めない人は、無理に飲まないようにしましょう。
    飲む場合には、節度ある適度な飲酒が大切です。日本酒なら1日1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウィスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度の量にとどめるようにしましょう。
  3. 食事 食事は偏らずバランスよくとる。
    現時点では、がんを確実に防ぐ単一の食品や栄養素はありません。逆に、とり過ぎるとがんのリスクを上げる可能性のある食品などもあり、そうしたリスクを分散させるためにも、まずは偏りなくバランスのよい食事をとることが基本となります。特に、塩分を控えめにすることは、胃がんや高血圧の予防や、循環器疾患のリスクの減らすのに効果的と考えられます。男性は1日8g未満、女性は1日7g未満を食塩量の目安にしましょう。塩辛や練りうになどの高塩分食品は週1回以内にとどめるようにしましょう。
    また、野菜や果物不足は、脳卒中や心筋梗塞をはじめ、さまざまな生活習慣病のリスクを高めますので、要注意です。1日当たり野菜を350g以上とるように心がけましょう。
    さらに、食道がんのリスクとなる熱い食べ物や飲みものは、少し冷ましてから口にするようにしましょう。
  4. 身体活動 日常生活を活動的に。
    身体活動が高いと、がんだけでなく心疾患による死亡のリスクも低くなるため、死亡全体のリスクが低くなると考えられています。ほとんど座って仕事をしている人なら、毎日合計60分程度の歩行などの身体活動と、それに加えて、週1回程度は活発な運動を行いましょう。活発な運動とは、たとえば早歩きなら60分程度、ランニングなら30分程度が目安です。
  5. 体形 成人期での体重を適正な範囲に。
    日本人の場合は、欧米人ほど肥満ががんに結びつかないことがわかっています。むしろやせによる栄養不足は免疫力を弱めて感染症を引き起こすなどのリスクもあるので、適正体重を保つことが重要です。
    適正体重は、身長と体重から計算されるBMI(肥満指数)という数値でわかります。BMIは次の計算式で計算できます。がんを予防するためには、太り過ぎないこととともに、やせすぎないことも大切です。
     BMI=体重(kg)÷身長(m)2 (厚生労働省では、中高年について20.0~24.9を目標のBMIとしています。) 
  6. 感染 肝炎ウイルス検査と適切な措置を。機会があればピロリ菌感染検査を。
    がんのリスクとしてたばこに次いで大きいのが、ウイルスや細菌への感染です。たとえば、肝がんの原因となるB・C型肝炎ウイルスや子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)などがあります。特に肝炎ウイルスは、検査を受けて感染の有無を知り、もし感染している場合はその治療を行うことが重要です。
    また、ヘリコバクターピロリ菌の感染は胃がんの原因となることがあるため、機会があればピロリ菌の検査を受けましょう。感染している場合は禁煙する、塩や高塩分食品の取りすぎに注意する、野菜・果物が不足しないようにするなどの胃がんに関係の深い生活習慣に注意し、定期的に胃の検診を受けるとともに、症状や胃の詳しい検査をもとに主治医に相談しましょう。以上の項目を、それぞれの生活に無理ない方法で取り入れて生活することこそ、科学的根拠に基づく現代のがん予防です。もちろん、今後の研究によって、項目や内容が追加されたり、変更されていきますので、情報に関心をもつことが大切です。

※参考:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」

 

 

お問い合わせ

保健福祉部 健康づくり課 地域医療係
住所:伊勢原市田中348番地
TEL:0463-94-4616
FAX:0463-93-8389
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