○伊勢原市第6次総合計画基本構想

令和4年12月19日

議決

1 将来都市像

本市は、昭和46(1971)年3月、風格と調和のとれた都市づくりをめざした市制施行から、これまで5次にわたる総合計画において、その時代に応じた将来都市像を掲げ、総合的かつ計画的なまちづくりを進め、市民福祉の向上に取り組み順調に発展してきました。

しかしながら、本市においても、今後想定される本格的な人口減少・少子高齢社会の進行により、これまで経験したことのない様々な社会環境の変化に直面することになります。

こうした中、私たちは、これまでのまちづくりを礎に、新たな時代を見据えた持続可能なまちづくりを進め、先人から受け継いだ大切な「ふるさと伊勢原」を確実に将来世代へつなげていく必要があります。

よって、新たな総合計画の策定にあたり、本市を取り巻く環境変化とともに、まちの特性や市民の想いを踏まえ、伊勢原の未来へ向けた将来都市像を掲げます。

人と自然と歴史が織りなす 暮らしやすさ実感都市 伊勢原

まちの主役である市民と市に関わる全ての人が、秀峰大山の麓に広がる豊かな自然や、先人が築き上げた誇れる歴史文化とつながりを持ちながら、相乗効果が生まれるまちづくりを進め、大切な故郷を未来につなげていきます。

こうした伊勢原らしいまちづくりにより、安心して暮らせる地域社会の実現と、市民生活の質や利便性の向上が図られ、誰もが暮らしやすさを実感し、住み続けたいと思えるまちになっています。

2 計画期間

令和5(2023)年度を初年度とするこの基本構想は、令和14(2032)年度を目標年次とします。

3 人口の将来展望

国勢調査に基づく本市の人口は、これまで増加傾向で推移し、令和2(2020)年に約10万1,800人となっています。しかしながら、毎年の人口動態によると、本市の人口は平成30(2018)年をピークに減少に転じており、令和42(2060)年には約73,900人となると推計されています。

将来にわたって持続可能なまちづくりを進めるには、人口減少にブレーキをかけ、バランスのとれた人口構造にしていくことが必要です。

本市の人口ビジョンにおいて、出生率の改善などが実現した場合の将来展望人口として設定した「令和42(2060)年に82,100人」の確保を見据え、今後10年間においては、多くの人が暮らしやすく、住み続けたいと思えるまちづくりを進めることで、人口の減少幅を可能な限り小さくしていきます。

4 まちづくりの基本理念

(1) 安全・安心な暮らしを守ります

災害や様々な脅威に強く、誰もが日々の暮らしに安全・安心を実感できるまちづくりに努めます。また、将来世代が安心して住み続けられる環境を守るため、カーボンニュートラルを念頭に、環境負荷が少ないまちづくりを進めます。

(2) 多様なパートナーとの連携を進めます

市民や地域をはじめ、様々な人材やノウハウを有する関係機関、企業、大学、各種団体など、多様なパートナーと連携・協力しながら、子育て環境の充実など、様々な地域課題の解決に取り組むまちづくりを進めます。

(3) 強みを生かしまちの成長を促します

豊かな自然や日本遺産をはじめとする歴史文化、広域的な交通アクセスの優位性など、地域資源やまちの特性を生かしながら、新たな視点と柔軟な発想によりまちの成長を促進し、活気と賑わいにあふれた魅力あるまちづくりを進めます。

(4) 時代にふさわしい行財政運営を進めます

将来にわたって持続可能な行政サービスを提供するため、健全で安定した行財政基盤の構築に努めます。また、各分野でのスマート技術の活用を促進し、市民の暮らしの質と利便性を高めるまちづくりを進めます。

5 基本政策

(1) 基本政策Ⅰ 災害や危険から命と暮らしを守る 強くしなやかなまちづくり(防災・安全分野)

近年、全国で自然災害が頻発・激甚化しており、首都直下地震等の巨大災害も切迫しています。

自治体が行う「公助」の強化に加え、自分の身は自分で守る「自助」、地域や身近にいる人同士が助け合う「共助」の適切な組合せと効果的な連携により、災害等の被害を最小限に抑えるとともに、迅速に復旧できるまちづくりを進めます。

また、子どもや高齢者などの社会的弱者が被害者となる事件や事故は後を絶たず、人々の安全に対する意識は高まっています。

警察等の関係機関と連携しながら、地域と一体となった交通安全・防犯・消費者対策の充実に取り組むとともに、迅速かつ的確に対応できる消防・救急体制を整え、安全な日常生活が送れる環境づくりを進めます。

(2) 基本政策Ⅱ 誰もが生涯にわたり 安心して健やかに暮らせるまちづくり(福祉・保健分野)

我が国は世界に例を見ない超高齢社会を迎えています。

団塊の世代が後期高齢者となる令和7(2025)年が目前に迫る中、医療・介護需要の増加や福祉ニーズの多様化・複雑化が見込まれます。

一方で、年齢や障がいの有無などに関わらず、健康で自立した生活ができることは、QOLの向上のみならず、まちの活力維持や社会保障費の抑制にもつながります。

地域のつながりによる支え合い・助け合いを基本としながら、子どもから高齢者、障がいのある人もない人も全ての方が、福祉のセーフティネットからこぼれることなく、住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくりを進めます。

また、本市の恵まれた医療環境を維持しながら、多くの方が健康づくりに親しみ、心身ともに健やかに暮らすことができるまちづくりを進めます。

(3) 基本政策Ⅲ 子どもを産み育てやすく 豊かな学びで未来を拓くまちづくり(子育て・教育分野)

我が国全体で少子化が長期にわたって継続する中、子育て世代が子育てと子どもの将来に、展望を描くことができる環境をつくることが必要です。

結婚・妊娠・出産・子育ての各段階に応じた切れ目のない支援を充実することで、子どもを産み育てたいと思えるまちづくりを進めます。

これからの時代に求められる資質・能力の育成や個々の教育的ニーズへの対応など、学校教育への要請は複雑多岐にわたります。

学校・家庭・地域の相互の連携と協働により、伊勢原の将来を担う子どもたちが、伊勢原への愛着と誇りを持ち、たくましく未来を切り拓いていくことのできる力を育んでいきます。

人生100年時代を見据え、生涯学習の重要性は高まっています。市民一人ひとりが、先人から受け継いだ歴史文化を大切にするとともに、未来に向かって学び合い、学習の成果を生かすことのできるまちづくりを進めます。

(4) 基本政策Ⅳ 活気にあふれ 地球環境にやさしいまちづくり(産業・環境分野)

人口減少に伴う消費活動の低下や担い手不足、さらには経済のグローバル化に伴い、世界情勢の影響を受けやすい国内経済は、持続的な事業活動や地域経済の不安定要素となります。

一方で、広域幹線道路開通による交通アクセスの飛躍的な向上や、マイクロツーリズムの普及など、発展の好機も訪れています。

本市の特性や恵まれた地域資源を活用しながら、商工農のそれぞれの特性に応じた産業の活性化や雇用の創出、魅力ある観光の振興に取り組み、多くの人が行き交い、賑わいと活力があふれるまちづくりを進めます。

また、人間活動の活発化とともに、気候変動や海洋プラスチックごみ問題、生物多様性の損失など、地球規模で環境に及ぼす問題が深刻化しています。

市民・企業・大学・行政が連携しながら、地球温暖化対策の取組を推進し、カーボンニュートラルの実現をめざすとともに、人と自然が調和した自然共生社会の実現に向けた取組や、廃棄物の発生抑制・資源化を推進し、環境負荷の少ない持続可能なまちづくりを進めます。

(5) 基本政策Ⅴ 都市基盤が整った 快適で暮らしやすいまちづくり(都市基盤分野)

今後の人口減少社会を見据え、集約型都市構造の実現に向けた効果的かつ効率的な都市基盤の整備が求められます。

広域交通ネットワークを生かした産業系市街地の創出や機能的で魅力ある交流拠点の形成などにより、まちの成長を促す新たな土地利用や都市整備を進めます。

高度経済成長期に整備された都市インフラについて、計画的な長寿命化対策や機能更新を進めます。

国や県等の取組とも連携しつつ、市民の暮らしを支える生活基盤を計画的に整備するとともに、利便性の高い交通環境や良好な景観を形成することで、市民の誰もが快適に暮らせるまちづくりを進めます。

(6) 基本政策Ⅵ みんなの力で進める 持続可能なまちづくり(市民・行政分野)

核家族化やライフスタイルの多様化により地縁の結びつきが希薄化する中、相次ぐ大規模災害や感染症の流行を契機に、人と人とのつながりや地域コミュニティの大切さが再認識されています。

また、国籍や人種、性別などの違いを互いに認め合い、多様性を尊重し合える社会の実現が求められています。

誰もが他者をいたわり・思いやる心をもち、将来にわたってつながり合える地域づくりを進めます。

人口減少・少子高齢社会が進む中、公共施設の老朽化、市民ニーズの多様化、都市間競争の激化など、地方自治体を取り巻く環境は厳しさを増しています。

限られた行政資源を戦略的に活用しながら、人口減少時代に対応した行財政運営に取り組み、選ばれ続けるまちづくりを進めます。

6 土地利用構想

土地利用は、市民の暮らしや生産といった様々な活動を支える共通の基盤であり、将来にわたる貴重な資源であるため、大切に次代に引き継がなければなりません。

このような中、本市の新東名高速道路や国道246号バイパスなどの広域交通ネットワークが、都市活力の増進に大きく寄与するものと期待されます。

また、人口減少社会、自然災害、環境共生などの地域の自然的、社会的条件を踏まえ、長期にわたって安定した土地利用を確保することが求められます。

土地利用に当たっては、豊かな自然や先人から受け継がれた歴史文化の保全・継承とともに、災害被害の最小限化や都市の成長を促す新たな土地利用の展開など、広域的かつ長期的な観点で持続可能なまちづくりに資する土地利用を推進する必要があります。

(1) 基本方針

将来都市像を実現するため、限られた市域の中で、多彩な特性を踏まえた土地の有効利用を図るため、次の基本方針を定め、総合的かつ計画的な土地利用を推進します。

ア 安全で快適に暮らすための土地利用

激甚化する自然災害から生命や財産を守る防災力・減災力を高めるとともに、公共施設機能の集約再編や緑豊かなまちなみの形成などにより、市民が安全で快適に暮らすことができる土地利用を推進します。

イ 自然環境との共生に配慮した土地利用

大山を中心に広がる森林や平野部の田園風景などの豊かな自然環境は、これまで守り受け継いできた本市の貴重な財産です。今後もこうした自然環境を適切に保全・継承するとともに、森林や農地が持つ多様な機能の活用や自然とのふれあいを通じた人々の交流促進、脱炭素、循環型社会の実現など、自然環境と共生する土地利用を推進します。

ウ 強みを生かし活力と賑わいを創出する土地利用

人口減少社会に対応した持続可能な集約型の市街地形成を図るとともに、都市の活力を増進するため、本市の交通アクセスの優位性を生かした広域交流拠点の形成や新たな産業基盤の創出を図ります。また、中心市街地の活性化を図り、人やもの、情報などの多様な交流による活力と賑わいを生み出す土地利用を推進します。

(2) 土地利用の方向

都市の持続的な発展を支える利用区分別の土地利用の方向を示すとともに、本市の暮らしと地勢的な特徴を捉えた「やま」「おか」「まち」「さと」の地域ごとに、それぞれの特性を発揮した土地利用の方向を示します。

ア 利用区分別の土地利用の方向

利用区分に応じた適切な土地利用を図り、都市の健全な発展に寄与する土地利用を推進します。

(ア) 森林

森林は、林業資源のほか、生物多様性の保全や土砂災害、洪水被害の防止、レクリエーションの場など、多面的な機能を有しています。また、市域の森林は、地域住民の生活に密着した里山や天然樹林帯、人工林など、バラエティーに富んでおり、自然とふれあう憩いの場になっています。こうした森林資源の特性を生かした保全と活用を図りながら、適切な森林環境の維持・管理を行います。

(イ) 農地

農地は、農産物を供給する役割をはじめ、自然環境の保全や良好な景観形成、防災など、私たちの生活と深く関わりがあります。こうした貴重な都市の資源である優良農地を次代に継承するため、農業の効率性や生産性向上に資する集積・集約化を促進するとともに、農業体験による市民との交流など、農地の保全と活用を図ります。また、広域幹線道路の整備などにより新たな土地利用への転換が必要な区域は、周辺農地に配慮した計画的な土地利用を推進します。

(ウ) 住宅地

地域特性に応じた暮らしやすい居住環境の形成とともに、人口減少社会に対応した、まとまりのある適切な土地利用を推進します。

また、都市機能の再編・更新を適切に行い、防災や交通、防犯など、安全で安心な住環境づくりに資する土地利用を推進します。

(エ) 産業系用地

a 工業地

周辺地域の環境に配慮しながら、交通アクセスの優位性を生かし、円滑な事業活動を支える操業環境の確保や集積を促進するとともに、伊勢原ならではの技術や製品開発など、活発な企業活動を支える適切な土地利用を推進します。

b 商業・業務地

市民の日常生活を支える都市機能の適切な集積を図るとともに、鉄道駅を起点とする移動の円滑化や地域公共交通の利便性を高めることで、中心市街地における商業の活性化を促進します。

伊勢原駅北口周辺地区は、都市基盤施設の整備と多様な都市機能の高度な集積を図り、本市の玄関口にふさわしい土地利用を推進します。

市役所周辺の行政センター地区は、公共施設の集約再編による機能集積を図り、市民生活に不可欠な都市拠点としての土地利用を推進します。

愛甲石田駅周辺地区は、近隣市と連携を図りながら、日常生活の拠点としてふさわしい土地利用を推進します。

c 新たな産業系用地

都市計画道路や鉄道等の広域交通ネットワークを生かし、産業系土地利用をつなぐ新たな連携や機能強化により、製造業・研究施設等の集積による産業系用地の創出を図ります。

伊勢原大山インターチェンジ周辺地区では、豊かな自然環境や集落環境と調和した産業・交流拠点の形成を推進します。

イ 地域特性別の土地利用の方向

それぞれの地域の地形条件、自然環境、歴史・風土など、地域の特性を生かした土地利用を推進します。

(ア) やまの地域

大山・日向地域を中心にひろがる「やま」の地域は、緑豊かな自然環境と歴史的な街並みや史跡が、地域の魅力を高めています。この恵まれた環境を保存・継承・活用しながら、多くの人が親しむことができる個性豊かな地域として発展していくことが必要です。

こうした資源を大切に守りながら、生活環境の向上と地域産業の振興を図る地域づくりをめざします。

(イ) おかの地域

高部屋や比々多地域を中心にひろがる「おか」の地域は、野菜や果樹をはじめとする畑や酪農等の畜舎など、里地里山の風景が広がっています。また、幹線道路沿道に集落地が形成されており、研究施設や大学、スポーツ施設などの多様な施設が立地しています。

新東名高速道路等の広域幹線道路網の整備効果を都市の活力につなげるため、伊勢原大山インターチェンジ周辺地区における産業基盤整備の推進や、道路ネットワークの利便性を生かした新たな産業用地の創出など、豊富な地域資源の活用と連携を図りながら、本市の広域交流の拠点となる地域づくりをめざします。

(ウ) まちの地域

伊勢原や成瀬、比々多地域を中心にひろがる「まち」の地域は、小田急線の伊勢原駅、愛甲石田駅、鶴巻温泉駅を中心とした市街地が形成され、住宅や商業、工業など、様々な都市活動が営まれています。また、駅周辺部は商業・業務機能が集積するとともに、産業拠点を結ぶ都市軸の形成・強化などにより、多様な都市活動を支える地域となっています。

都市の魅力と機能の向上に取り組み、移住・定住につながる住環境や、職住が近接した安全で快適な地域づくりをめざします。

(エ) さとの地域

大田地域を中心にひろがる「さと」の地域は、歌川や渋田川、鈴川などの伊勢原を代表する河川が流れる、水稲栽培や酪農などが盛んな地域です。今後は、近接するツインシティ大神地区土地区画整理事業など、他都市のまちづくりとの連携や交流を生み出す基盤づくりを進めていくことが必要です。

周辺市街地とのネットワーク形成の充実を図るとともに、水辺空間や集落地のまとまりなど、良好な田園風景を生かした住みやすい地域づくりをめざします。

伊勢原市第6次総合計画基本構想

令和4年12月19日 議決

(令和4年12月19日施行)

体系情報
第1編 規/第2章 基本構想
沿革情報
令和4年12月19日 議決