委員会中間提言

公開日 2010年04月01日

更新日 2016年05月27日

当面の行財政運営の改善についての提言

平成15年12月2日 伊勢原市行財政運営改善推進委員会 

本委員会は、平成15年6月17日に発足して以来今日まで、20名の委員が伊勢原市における行財政運営の現状の点検と今後の在り方について、真剣に議論を続けている。
 現在、各委員の問題意識を相互に出し合い、それらに共通するテーマを抽出し、今後の改善方策の在り方について議論を進めているところであり、市長から求められている本委員会としての提言をまとめるには、なお時間を要するところである。
 しかしながら、市当局において来年度予算の実質的な編成作業に着手する時期を迎え、ここで本委員会として、特に留意願いたい課題について意見を集約した。これは、本委員会の最終的な提言を待っていては、伊勢原市における行財政運営改善の新たな取組の開始時期がさらに1年以上先になってしまうので、短期的に改善を図るべきと考える事項について、市当局の主体的、積極的な取組を促すことをねらいとするものである。

本委員会の基本的状況認識

我が国の景気低迷が長期化し、国・地方の行財政を取り巻く環境は、極めて厳しい状況に直面している。かつて我が国の発展を支えてきた中央集権的な諸制度が見直され、地方分権一括法の施行を契機として、大きな流れとして国から地方へ、また、市民に身近な行政施策は基礎的自治体が担う方向へと変わってきている。さらに、現在、国と地方の税財政に関する「三位一体改革」の議論が大詰めを迎えており、自治体の行財政環境は、今まさに転換点にあると言えよう。

我が国の地方自治制度の特色の一つとして、身近な課題に対して自治体が幅広く対応することが可能となるよう、法制度により概括的に自治体に権限が与えられていることが挙げられる。長期的に見ると、そのことが高質・多様化する市民ニーズに対して、経済成長に伴う財政基盤の拡充を背景に自治体行政の領域を拡大する方向で作用してきた。その一方、現実的には、地方自治制度の根幹的部分は、法令により相当詳細に規定され、基礎的自治体である市町村がその意志で自由に行政課題に対応することには大きな制約があることもまた事実である。

市側から提供された資料やその内容説明により、これまで伊勢原市でも行政分野全般にわたる経費の節減や職員の採用抑制などの取組を進め、一定の効果を上げてきていることは理解する。

いわゆるバブル経済崩壊以降、民間企業においては、身を削るような徹底したリストラを進めてこの難局に立ち向かっており、顧客主義・成果志向の下でその経営体質の強化を図ってきている。民間が採用しているこのような経営手法については、一部の先進的な自治体が導入することをめざしており、具体的には新公共経営論(ニュー・パブリック・マネジメント)に基づく取組事例も出てきている。

かつて体験したことのない少子高齢社会、人口減少時代という未体験ゾーンに突入しつつある今日、伊勢原市においては、市民も行政もこれまでどおりの発想では、この危機的状況を乗り越え、さらに次の時代の明るい展望を切り拓くことが困難になっており、今日の諸状況は、従来型の対症療法的な対応では解決できない段階に至っているというのが本委員会委員の共通認識であり、議論の出発点となっている。

当面の行財政運営の改善についての意見

以上のような状況認識に基づいて、本委員会においては、本格的少子高齢社会、人口減少時代において発生してくる新たな課題への対応力を伊勢原市がいかにして保持していくのか、そのために行財政運営の在り方をどのように変え、効率的・効果的な市政の執行体制をどう構築していくべきなのかといった点について、生活者である市民の視点を中心に据えてその方向性を見出そうとしている。

委員会発足以来、これまで8回の会議を通じて次のような7つの検討課題を導き出しており、今後、小委員会を設けてそれぞれの項目についてさらに議論を深め、市長に対する最終的な提言としてとりまとめていく。

  1. 市民参加の推進
  2. 市民利用施設等の整備・管理運営の在り方
  3. 開かれた行政の推進
  4. 望ましい組織編成
  5. 行財政運営の基本的な考え方
  6. 行政事務の効率化、電子化
  7. 行政のプロの育成

 

上記7項目に即して、当面の行財政運営に対する本委員会としての意見を以下に提示する。現時点においては、基本的な考え方の提示にとどまり具体的内容を示していないものもあるが、それらについても考え方の根底にあるものを斟酌して事務事業の執行及び来年度の予算編成に当たっていただきたいと考えている。

  1. 市民参加の推進 ~市民も行政も発想を変えてお互いの連携を~

    これから先のまちづくりには、市民、団体、企業等との連携が不可欠であり、その基盤となる新たな仕組みづくりに行政としてより積極的に取り組むべきである。環境問題や、市民の安全・安心に関わる施策、地域の教育力に関する施策など、市民と共に取り組む課題への対応を通じて市民の意識改革を図ることも重要な課題であり、早急にそのための「場づくり」に当たることが必要である。

  2. 市民利用施設等の整備・管理運営の在り方 ~あえて施設利用の有料化を問う~
    • 公共施設の整備、管理運営の在り方について市全体として抜本的な見直しを行うべきである。その際、昨今の地方自治法改正等の動向を踏まえて、施設利用者である市民の視点に立脚し、高質なサービス提供を可能とするよう、施設の整備や施設利用の方法を見直すとともに、その運営管理については、直営方式にこだわらない柔軟な姿勢を強く求める。
    • 新たな公共施設の整備及び管理運営の事例として、高部屋コミュニティセンターについては、長年にわたる地域関係者等との調整の中で具体化してきた経過を踏まえて「いせはら21プラン」に位置付けられたものと判断する。その施設建設に当たっては、さらに市民の意見を十分に聞き、費用対効果を検証するとともに、既存の高部屋公民館の施設と一体となった効率的・効果的な管理運営の在り方等、最適の手法を採用すべきである。
    •  
    • 本委員会の設立に併せて、市の部局で個別に検討を進めている障害福祉センターの公設民営化及び地域集会施設機能が強い児童館の地元移管については、本委員会の提言を先取りする先進的取組として評価するものであり、現在の利用者の声を十分に組み入れた中で、利用者に対するサービスを一層充実する取組として、その実現を強く期待する。なお、集会施設等の整備には過去様々な経緯があることは理解するが、各施設の利用実態を把握し、全体的な在り方を再整理すべきである。
    • 市の行政は、市民生活に直結するサービス提供機能が中心になっている。これまで行政サービスは無料または極めて低廉な価額で受けられて当たり前という風潮が市民の側にあったことは否めない。しかしながら、本委員会の議論においては、特に受益者の範囲が特定される行政分野においては、受益と負担の在り方を見直すべきであるという意見が大勢を占めている。過去、市当局において社会教育施設等の有料化に向けた検討を進めてきた経過等を踏まえ、実質的に公民館と同様の施設機能を有するコミュニティセンターとの整合性を確保した上で、各種公共施設の使用料等の現状を点検の上、本来受益者に求めるべき部分については、適正な水準の負担を求めるべきである。
  3. 開かれた行政の推進 ~「市民が知りたい情報」を提供しているか~
    • 行政側が持つ多様な情報を市民に積極的に提供するべきである。その情報は、単なる膨大な数字や文章の羅列ではなく「何を意味するのか」をきちんと分かりやすく説明するものであることが必要である。市民への主要な媒体となっている「広報いせはら」については、市民が知りたい情報は何かという観点から点検し、内容の充実を図られるよう望むものである。そのためには、「広報いせはら」の企画、編集の場に市民の参画を求めるなどの具体的な対応策を講じることが必要である。
    • 市のホームページを通じた情報提供など、既にインターネットの利用に取り組んでいるところであるが、今後、IT社会のさらなる進展に合わせてその内容を充実するとともに、情報ネットワークの即時性・双方向性などの機能を一層活用した情報提供、情報交換を推進していくべきである。
  4. 望ましい組織編成 ~縦割り組織の弊害を市民に及ぼしていないか~
    • 市役所の組織の望ましい在り方については、最終提言に盛り込む予定であるが、当面、行政組織が縦割りであることによる弊害をできるだけ小さくするために、個々の事務事業の実施に当たっては組織横断的な対応を図られるよう望むものである。
    • 市民生活に身近な行政サービスを補完するために公益法人等の外郭団体が設けられているが、これらの団体に対する市の業務委託や職員派遣の在り方等、市と外郭団体との関係についても再点検し、今後の方向性を明らかにすべきである。
  5. 行財政運営の基本的な考え方 ~行財政運営改善の取組を市民に明確に伝えられるか~
    • 本年度から始まった「いせはら21プラン」には、多様な市民参加を通じて寄せられた市民の市政への期待、夢が集約されていることと理解している。非常に厳しい財政的な制約の下で、この新しい総合計画を着実に推進していくためには、過去の慣例や手法に拘泥することなく、ゼロベースの視点から現行の施策・事業を見直すことが必要である。言葉の上では従来から言われてきたことであるが、具体的な見直しの成果を上げなくてはならない。また、平成16年度予算は、伊勢原市の行財政運営を根本的に見直そうとしている市の姿勢が市民に明確に伝わるように組み立てるべきである。
    • 市民サービスの質的向上を図るために、地域の問題に市民が主体的に関わるということを基本にして、行政は、本来行政でなければ担うことができない領域に特化・重点化し、民間の事業所や市民団体等に委ねた方がサービスの質的向上を図ることが出来る事項については、積極的にこれらと連携し、活用することを今後の基本的方向とすべきである。
    • 市の財政が逼迫する要因の一つに一般会計から特別会計への繰出金が増加していることが挙げられる。下水道事業及び国民健康保険事業のように独立採算を基本として設けられている特別会計に対して、一般会計から多額の繰出金を支出することは、本来は市の一般施策に振り向けるべき財源の使途を大きく制約することになっている。特別会計の趣旨に鑑み、使用料・負担金等の徴収の現状を点検するとともに、各会計間の財源配分の在り方を見直しするべきである。
    • 市から各種団体に対して数多くの補助金が交付されている。これらについては、補助金を交付するに至った過去の経過と現在の費用対効果を検証し、今後の市補助金の在り方に関する原則・基本方針を明らかにする必要がある。特に団体運営経費に対する零細補助金については、各団体の理解を得ながら、極力その自立を促す方向性のもとで再整理すべきである。
  6. 行政事務の効率化、電子化 ~仕事の見直しとIT化を同時進行で~
    • これまでも「最少の経費で最大の効果」を上げることをめざしてきたと思うが、予算編成にあたっては、それぞれの事務事業の実施にかける手間・コストに対して得られる成果がどれくらいなのかという視点から再点検して予算化すべきである。
    • 市が現に行っている膨大な個別の事務事業については、必要に応じて専門機関等を活用しながら細部にわたる点検を行い、重要な課題に十分に対応できる余力を生み出すための「仕事減らし」の観点から全体を再構築すべきである。
    • 今後少子高齢化がさらに進み、市民ニーズがさらに多様化することが想定される。こうした新たな職員需要に対しては、当面、原則として内部管理部門から現場の業務のラインへの職員再配置により対応することを基本とすべきである。そのためには、内部管理事務の徹底した合理化が必要である。
    • これまで市の事務事業は「規則どおり」にやることを重視してきていると思われるが、市民の視点から再点検し、事務手続の簡素化、書類減らし等については、短期的に成果を上げる必要がある。
    • 今後、市民の利便性の向上と庁内情報の共有化の手段としてIT化を積極的に進めるべきであるが、上記のような一つひとつの事務手続の簡素化、書類減らし等を職員自らが主体的に行うこと無しには、IT化の効果を上げることはできないことを十分に認識し、職員の意識改革を図りながら計画的に取組を進めていくよう求める。
  7. 行政のプロの育成 ~職員の意識改革とスペシャリストの養成を~
    • 今日、市民ニーズの多様化に応じて、市がその守備範囲を拡大し、直接サービスを提供する時代ではなくなっている。これから先、良質な市民サービスを提供するためには、まちづくりの様々な場面における市民との協働がその前提になると考える。市職員は、それぞれの職務の執行に際して、市民・NPO等とのパートナーシップを築いていく基本的な姿勢が不可欠になっていることを深く認識するべきである。
    • ほとんどの職員は真剣に職務に取り組んでいると判断しているが、勤務時間内は全職員が職務に専念していることが一目瞭然の職場であることが当然であり、職員は「市民全体の奉仕者」であることを再認識しなくてはならない。まもなく迎える職員大量退職時期をいかに乗り切っていくのか、職員一人ひとりの士気と知恵を発揮されるよう強く期待する。
    • これまで市職員の人材育成は、定期的な人事異動制度のもとでゼネラリストを養成することに比重が置かれてきたものと考える。今後は、例えば保健・福祉など市民生活に直結する行政部門においては、その部門に関する知識と経験を有する専門的な職員(スペシャリスト)を養成する仕組みについても併せて検討していく必要がある。また当面、市民との接点となる窓口には、市民と行政との信頼関係の礎として、その仕事の内容を熟知し、市民の疑問・質問に対して即答できる職員を配置するべきである。
    • 市の施策・事業の改善、改革を進める上で、市の職員が果たす役割は極めて大きい。職員の意識改革が伴わなければ実効を確保することは困難であり、職員研修のテーマ及びその手法の選定に際して、このことを十分に配慮されるよう望むものである。また、小さなことでも具体的な改善の取組を始めることが職員の意識改革の第一歩であり、市としてそのための行動を自ら起こすことを期待するものである。

当面の行財政運営に対する本委員会としての意見は上記のとおりである。市当局においては、本委員会における真剣な議論の結果として、これらの意見を受け止めていただきたいと考える。

本委員会としては、伊勢原市にとって行財政運営改善の新たな取組が始まる年として、来年度から確実な成果を上げられるよう期待するとともに、予算編成過程において具体化した取組の内容を本委員会に御報告いただくようお願いするものである。

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