公開日 2012年10月04日
歳時記 6月
養蚕上がり
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養蚕が一般化したのは江戸時代で、明治・大正時代には全国的に盛んになりました。当時の代表的な輸出品でもありましたが、太平洋戦争を境に激減しました。
伊勢原市内でも明治時代後半に一般化したようですが、戦時中の食糧難でほとんどの農家がやめてしまいました。
養蚕は、蚕(かいこ)の卵を孵化(ふか)させて、稚蚕(ちさん)を掃き立てこれに桑を与えて初眠(しょみん)から四眠(よんみん)まで育て、繭(まゆ)を作る段階になったら上蔟(じょうぞく)といってマブシに入れて繭を作らせるものです。
蚕が大きくなるに従い、いくつかの籠に分けていくので籠の数が増えていき、上蔟の段階になると家の中がマブシでいっぱいになり、人は部屋の隅で寝るようでした。
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出来上がった繭は、上繭(純白のもの)、中繭(染みのある繭)などいくつかの段階があり、マブシから繭を取り出すときに選別し、上繭だけユタンと呼ぶ木綿袋に入れて出荷しました。繭は農家にとって貴重な現金収入であったようです。繭を売りに行った父親が帰りに土産を買ってきてくれるので、子どもたちはそれを楽しみに懸命に手伝いをしたそうです。
出荷できない繭は、農家で真綿や糸にしていました。最近では、繭玉を使ってウサギや干支の動物の形を作る繭玉人形を作っています。
蚕が繭玉のまねをして、良い繭をつくるとのいわれから、蚕が上蔟すると白い団子を作り、繭玉の形にして木に挿し蚕棚に飾っていました。これを養蚕上がりといいます。
掃き立て :孵化した蚕を飼育するための置き場に移す作業のこと。
眠:蚕が桑を食べるのをやめ、脱皮のために静止する状態またはその時期。寝ているように見えるので眠という。 眠を 4回繰り返して脱皮する。
上蔟:繭を作る段階になった蚕をマブシに移す作業のこと。
マブシ(蔟):糸を吐くようになった蚕を移し入れて繭を作らせるための用具。
春蚕:5月5日頃掃き立て、6月初旬上蔟し、30日頃出荷。
夏蚕:7月20日頃掃き立て、8月10日頃上蔟。
秋蚕:8月10日頃掃き立て、9月初旬に上蔟。
晩秋蚕:9月掃き立て、10月初旬上蔟。