公開日 2014年09月24日
事業は平成22年11月1日から着手されました。平成22年度末までに工事請負業者の選定、入札、契約と進み、平成23年1月8日の初薬師終了後から工事着手となりました。
工事の準備
最初は本堂内にある文化財の移動です。解体修理ということで、内部の文化財をすべて移動しなくてはなりませんでした。
作業は、住職を筆頭に寺世話人と文化財課職員により行われました。
- 民俗資料の搬出
- 絵画の搬出
- 仏像の移動1
- 仏像の移動2
- 県有形民俗文化財「大太鼓」、
- 県立歴史博物館へ
工事着手
本堂前の樹木は、作業小屋建設のため伐採されました。
- 境内樹木移植、伐採前
- 移植、伐採後
足場の設置
本堂を覆う「素屋根」の基礎ができあがりました。鉄筋コンクリートの基礎ですが、地表に置いてあるような造りになっています。
- 本堂右手の基礎
- 4月15日の例大祭「神木登り」
- 足場の設置1
- 足場の設置2
素屋根と作業保存小屋ができました。
- 作業小屋の外観
- 作業小屋の内部
解体作業
本堂の解体開始
組み立てる時にどの部材がわかるように、ひとつひとつの板や柱に「番付札」と呼ばれる札を付けていきます。
- 番付札
- 番付札が付けられて外される前の部材
本堂内陣・外陣の解体
本堂内部の壁板や床板などをひとつひとつ外していきます。
- 内陣、左右の須弥壇(しゅみだん)の
- 床を外した状況
- 外陣(手前)と内陣(上段)の状況
- 内陣の床板を取り除いた状況。礎石が見えます
茅葺き屋根の解体
屋根の茅は通常の2~3倍(1メートル以上)の厚さで葺かれていました。茅を降ろし、組まれていた竹をはずしていきます。
- 茅葺きの撤去1
- 茅葺きの撤去2
- 茅葺きの撤去3
小屋組(屋根裏部分)の解体
職人さんの手で茅が降ろされた後、向拝・小屋組が解体され、次第に小さくなっていきます。
- 茅葺きを撤去後、姿を表した小屋組
- 向拝の屋根
- 向拝の屋根を外した状況
- 向拝の屋根を取り除いた状態
小屋材、垂木(たるき)を外していきます。
- 解体が進む小屋組
- 西側の地垂木を取り除いている様子
- 地垂木がすべて取り除かれた状態
- 東側の地垂木が取り除かれた状態
柱の解体作業
柱の解体が始まりました。
屋根を外すと柱と梁の骨組みだけとなります。クレーンを使いながら慎重に解体していきます。
- 解体が進む柱
- 柱の解体1
- 柱の解体2
- シロアリ被害の柱
すべての柱が解体されました。
取り外した部材
取り外した部材には、軒下の彫刻など、普段は間近に見ることができないものもあります。
- 向拝木鼻(象)彫刻
- 延享2(1744)年と墨書された板
向拝の木鼻(龍) 正面、左向き、右向きがあります。
- 延享2(1744)年と墨書された板
形が2つに分かれ、時期差と考えられています。
- 取り外された和釘
部材の補修
取り外した部材は、可能な限り再利用します。痛んだ部分を削り取り、そこに新材を埋め込みます。
痛んだ部分を削り取ります。
内部が痛んだ柱材は二つに断ち割って痛んだ部分を削り取ります。
削った部分に新材を埋め込み接着します。
組み上げ工事
平成26年3月から、いよいよ組み上げ工事が始まりました。
本堂の内部に足場を組み、柱を建てていきます。
柱と土台、梁をつなぎ合わせて、軸部を組み立てていきます。
軸部もだいぶ組み上がってきました。
古材の補修を行い、部材に弁柄(べんがら)を塗っていきます。
職人の手で、部材を一つ一つ組み上げていきます。
長い年月使われていた古材は、捻れが生じているため、仮置きを行い勾配の調整をした後に釘で止めていきます。
- クレーンを使い隅木を組み上げます
- 隅木が組み上がりました
組み上げた垂木に弁柄を塗っていきます。
弁柄(べんがら)を塗った後、墨差し・墨塗塗装を施します。
小屋組の土台になる部分まで組み上がりました。
向拝の基壇を解体し、新しい礎石と礎盤を据え付けました。
桔木(はねぎ)を取り付けました。

耐震補強工事の様子です。
今回の修理で加えられた行程です。
柱に直接穴を開けることなく、ブレースという金具を取り付けて、柱と柱をつないでいきます。

向拝(ごはい)の軸部を組み立てています。
獅子も取り付けられました。
向拝を組み立てた後、板を葺きます。板を葺いた後、銅板を重ねます。

小屋組が完成しました。
屋根工事
平成27年4月から屋根の工事が始まりました。
茅を葺く下地の竹材を準備し、組んでいきます。
- 竹材が運び込まれました
- 下地を組んでいます
これから、茅を葺いていきます。
- 茅を葺く下地(野地)の竹材を組んでいる様子です。これから葺く茅も運び込まれています。
-
- 茅を葺き始めました
- 茅の厚みが増しています
- 茅が葺きあがるまであとわずか
- 棟も出来上がりました
- 茅が葺き終わりました
- 軒先の茅を刈り込み、形を整えています
- 屋根の完成です
建具工事
屋根の工事と並行して建具の工事も行われています。
- 内陣の床張りを行っています
- 欄間を取り付けています
新材を補いながら、使える古材は使って組み立てています
内陣、外陣工事
内陣と外陣の工事を並行して行っています。
- 内陣工事の様子
- 須弥壇を設置しています
- 外陣工事の様子
- 外陣の床面をならしています
扉を立てかけて、一枚ずつ丁寧に塗っていきます
本堂床下の発掘調査
解体作業が終了したところで、本堂下の構造や建立時期を確認するために、平成24年度・平成25年度・平成26年度に教育委員会が本堂床下の発掘調査を行いました。
平成24年度の調査は、柱を解体した後に、礎石だけになった状態で行いました。トレンチという四角い穴を本堂裏側の東西に2か所、本堂手前側に2か所の計4か所を人力で少しずつ、掘り下げていきました。
本堂裏の西側からは雨落ち(雨水を排水する施設)とみられる溝が見つかり、この溝から平安時代の瓦や土師器が見つかりました。
また、地表面の15センチメートル下には硬く固められた面(硬化面)があり、そこで遺構が確認できることから、現在の本堂は、以前に建っていた建物の上に盛土をして造られていたことがわかりました。 このほかにも鉄釘の断片や中世の陶器の破片が見つかりました。
平成25年度は、内陣中央部宇の須弥壇下を調査しました。鎮檀具や埋納具の存在も期待されましたが、確認されませんでした。一定時期開いていたと思われる穴からは、瓦や中世陶器の破片、仏像や仏具の飾りの一部と思われる金具等が出土しました。
平成26年度の調査は、2回に分けて行いました。まず、向拝礎石の解体に伴い、調査を行いました。その結果、今の本堂の礎石の下から、前の建物のものと思われる礎石が確認されました。礎石は現状より低い位置に据えられており、現状の礎石を据える際、基壇の高さをかさ上げしたと考えられます。次に行った調査は、内陣と外陣の境を確認することを目的に行いましたが、明確な遺構は確認することができませんでした。出土遺物は、瓦や中世の陶器、古銭でした。
発掘調査の様子
平成25年度実施の発掘調査
- 巴(ともえ)瓦出土状況
- 巴(ともえ)瓦
平成26年度実施の発掘調査
- 向拝の礎石を解体する前の様子
- 礎石の下から礎石が見つかりました
- 中世の陶器が出土しました
- 瓦も出土しました
平成25年度に実施した、須弥壇下の調査で見つかった出土資料は、とても小さいため、拡大して掲載しました。
県指定重要文化財「二本杉」の枝打ち
本堂から撤去した屋根の茅を使って、市指定重要文化財「鐘堂」の屋根修理と傷んでいるところの柱の修理を行うことになりました。
修理を行う時に屋根にかかってしまう県指定重要文化財「二本杉」の枝打ちを行いました。
枝打ちにはクレーン車を使いました。
クレーン車の先にゴンドラのようなものをぶら下げてそこに職人さんが乗り込み、枝打ちを行い、その枝を適当な長さにしてから一本づつ下ろしていきました。
- 枝打ちの様子1
- 枝打ちの様子2
鐘堂の修理
屋根葺きは、茅葺き職人の技術向上を目的とした研修の一つとして行われました。 全国から若い茅葺き職人が集まり、国の技術選定保持者である茅葺き職人の指導の下に行われました。
- 鐘堂修理の様子1
- 鐘堂修理の様子2