公開日 2025年02月07日
【特別公開】上粕屋・和田内遺跡第4次調査
遺跡の概要
- 所在地
伊勢原市上粕屋字和田内2946-3外 - 調査原因
一般国道246号(厚木秦野道路)建設事業に伴う発掘調査 - 調査期間
令和4年11月1日~令和6年2月29日 - 主な時代
縄文・古墳・古代・中世・近世 - 遺跡の立地
和田内所在小谷戸の斜面袖
令和5年度の発掘調査で、機織りに用いる筬(おさ)と莚(むしろ)打ちに用いる綜絖(そうこう)が出土しました。中世の筬と綜絖が良好な状態で出土したのは、全国初の事例です。
機織り用の筬は、土坑の底面から4本が折り重なる状態で出土しました。筬羽と親羽の素材は、タケ亜科の茎の割裂き材でした。筬は、筬羽の本数と間隔から、麻などの植物繊維を素材とする布を作ったものとみられます。放射性炭素年代測定の結果、15世紀中頃の製品です。
莚打ち用の綜絖は、筬とは別の土坑から出土しました。素材は、クスノキです。断面漏斗形の穴が向きを交互にしながら連続する状況がよく分かります。棒が綜絖とともに出土し、綜絖に取り付ける把手かもしれません。中世後期の製品と考えられます。
筬と綜絖が出土した場所は、中世極楽寺の寺域であったと考えられます。極楽寺には、機織りや莚打ちに携わる職人がいたことを示す出土品といえるでしょう。
筬とは
布を織る機(地機(じばた)・高機(たかばた))の一部品。経糸の密度や織幅を一定に揃える役割をもつ。また、高機では、緯糸(よこいと)の打ち込みにも使われる。地機や高機は、渡来人によってもたらされたと考えられており、5世紀中頃以降に関連する出土品がある。
綜絖とは
莚を打つ機の一部品。上糸と下糸を通し、前後させるための装置。上糸と下糸を通す穴が漏斗形で、向きを交互にしながら配列する特徴をもつ。綜絖の角度を上下に変えることで、上糸と下糸が上下(前後)し、イ草やワラなどの緯糸を入れて、綜絖で打ち、織り込む。
調査の写真
C79号土坑遺物(筬)出土状況 C75号土坑遺物(綜絖)出土状況
(神奈川県教育委員会所蔵) (神奈川県教育委員会所蔵)