所信表明 令和6年10月16日

公開日 2024年10月31日

更新日 2024年11月12日

萩原市長所信表明の画像

とき:令和6年10月16日

ところ:令和6年度10月臨時会

このたび伊勢原市長に就任いたしました萩原鉄也でございます。議長から発言の許可をいただきましたので、市長就任に当たりまして、今後の市政運営に対する私の考えを述べさせていただきます。
 まず、さきの市長選におきまして、市民の皆様、関係各位の皆様から多くの御支援を賜り、市長に就任させていただきました。この場をお借りして、心よりお礼申し上げます。
 また、市議会10月臨時会の開会に際し、市長という立場で御挨拶できますこと、大変光栄であるとともに、その課せられた職責の重さを改めて認識し、身の引き締まる思いでございます。
 私は、平成24年の伊勢原市議会議員選挙で初当選をさせていただき、3期目の途中、今年7月に議員を辞職いたしました。これまでの議員活動を通じ、市民の皆様が生活する中でどのようなことを感じ、何が課題となっているかという声を真摯に受け止め、また、様々な立場の方々と議論を交わし、微力ながら伊勢原のために尽くしてまいりました。そうした過程の中で、伊勢原市にはいまだ多くの課題があり、それらの解決には国や県との連携をはじめ、市民や議員の皆様の御理解と御協力、そして市職員の皆様の御協力が不可欠であることを痛感いたしました。
 さて、伊勢原市は神奈川県の中央に位置し、都心から1時間余りで訪れることができる大変交通環境が整ったところであり、また、大山や日向等の歴史遺産や、豊かな自然環境にも恵まれたところでもあります。特に遺跡や歴史遺産などは市内の至るところに点在し、新たな発掘もなされています。遠く、いにしえのこの地を思えば、木を使うために森を求めた旧石器時代、獲物を求めて狩りをした縄文時代、稲作のために水田に水を引いた弥生時代など、様々な時代の遺跡が数多く出土しており、これらは古くから伊勢原の地で人々が暮らしてきたあかしであります。まさに伊勢原の大地が、日照、気象、地形に恵まれていることを物語っており、この伊勢原が大変住みやすいことを先人たちが教えてくれています。
 このような歴史文化や自然環境が富む一方で、本市はインフラ面でも大きな変化を遂げています。令和2年3月には新東名高速道路伊勢原大山インターチェンジが開設し、さらには今後予定される全線開通により中部圏や関西圏からの利便性が一段と向上することが期待され、まさに本市にとってまたとないチャンスであると考えます。
 私は、伊勢原市市制施行後7代目の市長となります。改めて、これまで本市が歩んできた道のりを振り返りますと、今の伊勢原市があるのは、歴代市長をはじめ、市民や議員の皆様、そして職員の皆様が伊勢原市のために懸命に築き上げてきたことの表われであり、深く敬意を表します。こうした積年のまちづくりを市制施行以来、6人の市長が先頭に立って進めてこられた地道な努力と成果を尊重し、これらを土台として、本市のさらなる発展に貢献していくことが私の使命であると考えております。
 一方で、これまでの成果に決して満足することなく、さらにまちづくりを進化させ、市民生活の安心安全と暮らしの向上に取り組むことが必要であると考えます。私は、今回の市長選挙に臨むに当たり、伊勢原市を「住みたいまち」、「住み続けたいまち」にしていきたいと申し上げてまいりました。私自身、市民が日々生活する中で、困っていることは何か、大切なことは何か、行政が支援しなければいけないことは何かと自問自答を繰り返しながら、また、同時に、様々な立場の方々のお話を伺ってまいりました。そして、一つの結論として、市民一人一人が安心して日常生活を送るために大切なこと、それはそれぞれのライフステージで誰もが経験する医療、福祉、子育て、教育であるという考えに改めて至りました。もちろん本市の将来を左右するハード面の整備は不可欠ですが、同時にこうしたソフト面の充実が大切であり、それが住みたいまち、住み続けたいまちの実現につながっていくのではないかと考えます。
 我が国の出生数は、令和4年に初めて80万人を割り、想定よりも早く少子化が進行しています。本市でも、今後、生産年齢人口の減少により税収減が予測される一方で、高齢化による社会保障関連経費が増大し、加えて、公共施設の老朽化も進み、多額の財政負担が生じることが避けられません。今後はこうした人口減少、少子高齢社会を前提とすることから、これまで以上に市政運営から市政経営への視点の転換が必要ではないかと考えます。
 市政経営の観点から考えますと、人、物、財源、情報という経営資源を最大限活用することは疑いの余地はありませんが、本市の組織経営を見渡した場合、まず大切にすべきは組織マネジメントである、人材であると私は確信しております。様々な年代の職員からも意見を聞きながら、まちづくりへの思いを全職員と共有し、一致団結して組織力を高め、これからの課題に全力でチャレンジし、この難局を乗り越えてまいります。どうか議員の皆様、市民の皆様にも御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 それでは、ここでこれからの市政運営に当たり、私が掲げる基本的な方針について申し述べさせていただきます。
 私の目指すまちの姿は、住みたい・住み続けたいまち伊勢原をつくり上げることです。そのために6つの約束を掲げました。
 1つ目は、子育て世代が、子育てしやすい・暮らしやすいまちを目指すことです。
 全国的に少子化が急激に進行し、国全体の令和5年の合計特殊出生率は1.20で、人口維持に必要だと言われている2.07を大きく下回る危機的な状況です。本市も例外ではありません。年間の出生数を見ると、平成30年の745人から令和5年が550人と、5年間で195人、26%も減少しています。この間、総人口は横ばい傾向であることから、少子化が進行していることは明白です。出生率や出生数が減少している理由は、ライフスタイルや結婚観、家族観の変化などです。様々な要因が考えられますが、中でも日々の生活や将来に対する不安、例えば経済的な不安が大きな要因となっていると考えられます。こうした状況を踏まえますと、今後、本市が子育て世代に選ばれるまち、住みたい・住み続けたいまちになるには子育てに対する支援の充実が不可欠ですので、まず乳幼児のいる家庭へのおむつ支給や妊産婦の健康診断等に対する助成拡充に向けた取組を進めてまいります。また、幼児教育・保育施設への支援を拡充し、働きながら安心して子育てができる環境を整備するとともに、将来に向けた本市の教育の在り方、老朽化する学校施設をどうするべきかなど、児童生徒や地域にとって最も望ましい教育環境の在り方を検討してまいります。
 2つ目は、恵まれた医療環境を生かし、日本一の健康都市を目指すことです。大きく2点ございます。医療・福祉の充実による健康寿命の延伸と障がい者に優しいまちづくりです。
 まず健康寿命の延伸です。来年は、いわゆる2025年問題と言われる全ての団塊の世代約800万人が75歳以上の後期高齢者となります。国の総人口約1億2000万人のうち後期高齢者が約2200万人、これは18%、そして人口の30%が65歳以上となることが予測されており、医療費や介護費の増大、労働力不足など社会全体として様々な影響が懸念されています。こうした超高齢社会がさらに進む中、私の歯科医師としてのライフワークである健康寿命の延伸や高齢者の健康維持に注力し、特に要介護につながる認知症対策などに取り組んでまいります。そのためにも特定の医療施設単独ではなく、病院やクリニック、訪問介護ステーションといった医療機関、介護施設、行政などが一体となった地域医療体制を充実させてまいります。さらには、地域の中で個々に役割機能を持った医療機関が連携することで、患者さんが急性期から回復期を経て自宅に戻るまで、切れ目のない医療を受けることができる地域医療の連携、ネットワークづくりを目指してまいります。こうした本市の恵まれた医療環境を生かした取組により日本一の健康都市を目指してまいります。
 次に、障がい者に優しいまちづくりです。さきのパリ・パラリンピックでは、大会のテーマに共生社会の実現が掲げられていました。障害がある、ないに関わらず、女性も男性も、お年寄りも若い人も、全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、支え合う社会、そして障害のある人もない人も支える人と支えを受ける人に分かれることなく、共に支え合い、様々な人々の能力が発揮される社会を体現したすばらしい大会でした。本市でも、自然にお互いを思い、支え合う環境を築いていくことが大切ではないでしょうか。私は、共生社会の実現こそがまちの活力向上につながると確信しております。そして、こうした社会を実現するため、まずは障害のある人の就労環境の向上を目指すとともに、保育園や幼稚園等と連携を図りながら、障害のある子どもたちが伸び伸びと育まれる環境整備のほか、保護者の負担軽減を図り、生活の質の向上を目指してまいります。
 3つ目は、持続ある力強い経済と、魅力ある観光発信都市伊勢原を目指すことです。
 まず、農業分野については持続的かつ安定的に農業経営ができる環境づくりに取り組んでまいります。農業現場では、従事する方の高齢化とともに、担い手不足が大きな課題となっています。このような状況を改善するには、やはり生産性の向上が不可欠ではないでしょうか。例えばスマート農業の実現に向けた先端技術の導入など全国の先進事例を研究し、本市の状況を踏まえた次世代の農業を担う人材の育成に取り組んでまいります。
 商業分野につきましては、伊勢原駅北口地区再開発事業をきっかけとして、中心市街地の活性化に向けてどのような方策が効果的かを再開発事業の推進と並行して関係者と議論を重ねてまいります。さらには、伊勢原大山インターチェンジ周辺の土地利用による市内産業の発展や、新東名高速道路の全線開通を見越した周辺地域への波及効果等を踏まえ、商工業の活性化につながる取組を検討してまいります。
 また、観光振興については、本市は平成28年に日本遺産の認定を受けました。これまでも日本遺産を生かした観光振興に取り組んできましたが、認定当時の注目度が若干薄れてきているようにも感じております。新型コロナも一段落し、日本国内はインバウンド効果によるにぎわいを見せております。本市でも、いま一度、日本遺産を核とした観光振興の充実を図るとともに、これまで活用されてこなかった歴史文化遺産の掘り起こしや、それらを含めた新たな観光資源の活用を検討してまいります。
 4つ目は、生活の利便性、経済インフラの整ったまち伊勢原を目指すことです。
 これからの10年は将来の伊勢原を形づくる上で、これまでにない数々の大規模な基盤整備が計画されており、本市のまちづくりにとって千載一遇のチャンスであると捉えております。伊勢原駅北口地区再開発事業をはじめ、令和9年度に予定される新東名高速道路の全線開通、また、小田急電鉄の総合車両所の整備や、それらと連携した都市計画道路の整備や周辺地域の開発、さらには、こうした基盤整備を有機的に連携させた利便性の高いまちづくりの推進など、髙山市政で種をまいていただいた大型プロジェクトを引き続き一歩ずつ着実に推進してまいります。
 5つ目は、生きがい・やりがいのある魅力的な市役所を実現することです。
 これまでの議員活動を通じて感じたことですが、市役所の職員が生きがい、やりがいを持って元気に市民の皆様と接することが、ひいては市民の皆様との信頼関係を築き、皆様の生活の質の向上にもつながるものと信じております。しかしながら、市役所の職員、今の市役所やその職員の間には少し閉塞感があると感じます。よりよいまちづくりのエンジンとなる伊勢原市役所の活性化に向けて、まずは職員と意見交換する場を設け、未来の伊勢原を創造する柔軟な発想を持った職員の育成を進め、時代のニーズに即した行政サービスが提供できる執行体制を構築してまいります。
 最後に6つ目は、災害に強い安心して暮らせる伊勢原を目指すことです。
 今年元旦に発生した能登半島地震、また、先月21日から23日には能登半島で豪雨があり、複合的に甚大な被害が生じました。本市でも8月上旬に南海トラフ臨時情報が発表され、また、7月末の豪雨に続く8月末の台風10号の影響による大雨では、善波トンネルのり面の崩落や、各地で発生した土砂崩れなど、大きな被害となりました。災害はいついかなるときに起こるか分かりません。全国各地で起こった災害やその対策を教訓に、改めてこれまでの災害対策を検証することが必要だと考えます。大規模地震や近年多発する豪雨を改めて想定しながら、必要な対策を早急に検討し、災害に強い安心して暮らせるまち伊勢原を目指してまいります。まずは自助、共助、公助が実践的に支え合う仕組みを構築するとともに、備蓄品や地域の自主防災会への助成の充実などに取り組んでまいります。ほかにも河川の浸水対策や急傾斜地対策、下水道施設の耐震化をはじめ、高齢者や障がい者等の災害弱者が確実に避難できる仕組みの構築、さらには障がい者や女性に配慮した避難所対策を進め、災害に強い、安心して暮らせるまち伊勢原を目指してまいります。
 以上が私の市政運営に当たっての基本的な方針ですが、まちづくりは短期間で成果が出る取組もありますが、多くは5年、10年、あるいはさらに長い時間を要して成果が現れるものと考えます。特に、医療、福祉、子育て、教育の分野は、市民一人一人のライフステージの変化とともにニーズも変化し、その効果の検証には時間がかかります。そのときそのときのニーズに的確に対応すること、今、必要な行政サービスは何かといった、常に市民に寄り添う姿勢が大切です。今後はそうした姿勢、視点を重要視し、これまでの取組を検証しながら、市民生活の向上につながる取組を早急に進めてまいりたいと考えます。
 一方で、改めて申し上げる間もなく、財政状況が大変厳しいことは、重々、重々承知しております。だからこそ施策の優先順位をしっかりと見定めながら、ソフト、ハード、両面の事業をバランスよく推進し、将来のよりよい伊勢原に向けたまちづくりを目指してまいります。さらに、こうした厳しい状況であるからこそ、市政運営から市政経営に転換することで、これまでの常識から脱却し、大胆な発想や新しい概念を取り入れ、この難局を乗り越えていかなければならないと考えます。申し上げた内容は、私一人ではもちろんのこと、市役所だけではなし得ることはできません。今こそ市民の皆様をはじめ、本市に関わる全ての皆様のお力とお知恵を結集し、伊勢原が一丸となって、共に明るい未来をつくっていかなければなりません。そして、その先にこのまちに住みたい、住み続けたいと思ってもらえる伊勢原が実現するものと信じ、まちづくりを進めてまいります。
 以上、市長就任に当たっての私が目指す市政運営の考えを述べさせていただきましたが、そのためにも、改めて市民の皆様、議員の皆様、皆様方の御支援、御協力を切にお願い申し上げ、私の所信表明とさせていただきます。ありがとうございました。

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